N・P

2022年10月8日~10月14日

サイレント映画『N・P』では、ある夏の日本を舞台に、謎めいた故・高瀬皿男の小説『N・P』 に魅了された4人の若者が、その1冊の本によって結びつけられてゆく様子が描き出される。
翻訳と原作とはどう関係するのか?フィクションと現実とは?人生は、どこまでが決められた物語として演出されたフィクションなのか?そして、登場人物の間でしばしば起こる近親相姦的な相互作用の本質とは何なのか?
美しい夏の色彩が映画の空気感を作り出し、からみあった暗い心が、若さそのもの、そして過去が人生に与える影響についての、静謐で瑞々しい瞑想へと導かれていく。

吉本ばななの原作において語り手である風美は、翻訳家の戸田庄司と恋人同士であった。彼が『N・P』を日本語に翻訳していた頃のことだった。『N・P』は、アメリカで暮らした日本人作家・高瀬皿男による97話の自伝的短編集である。戸田庄司はこの本の翻訳中に自殺した。未収録の98話目のストーリーは、吉本ばななの原作の核心部分であり、高瀬の娘である翠との近親相姦を扱っている。
庄司の自殺から4年後、風美は高瀬の遺した子供たちと出会う。まずは双子の乙彦と咲、それから異母姉の翠。3人はいわば本の中の張り詰め、超現実的で閉ざされた世界に生きており、彼らに寄り添う風美を通して、それぞれの脱出口を見つけようとする。翠は、社会的、倫理的、性的な規範を欠いたキャラクターであるかのように描かれ、過去には実父・高瀬と関係を持ち、腹違いの兄弟である乙彦とも恋仲になっていく。

原作:吉本ばなな『N・P』(角川書店刊)
©︎1990 BANANA YOSHIMOTO / "N・P"

上映期間 2022年10月8日~10月14日
上映時間 1時間
監督 リサ・スピリアールト
出演 加納風美/箕輪翠/高瀬咲/高瀬乙彦
制作国 ベルギー(2020年)
公式サイト http://www.np-film.com