没後60年 ジャン・コクトー映画祭

2023年3月18日~3月24日

『詩人の血 4Kデジタルリマスター版』
[1932年/フランス/50分]
監督:ジャン・コクトー
出演:エンリケ・リベロ/エリザベス・リー・ミラー
コクトーが映画というメディアで初めてイマジネーションをあますことなく解き放った記念すべき作品にして、サルバドール・ダリ×ルイス・ブニュエルの『アンダルシアの犬』(1928)と並ぶアバンギャルド・カルト・クラシック!四つのエピソードからなる本作にはギリシャ神話の要素や鏡、雪合戦といった後の『オルフェ』や中編小説「恐るべき子供たち」と共通する描写が散りばめられ、挑戦的な特殊効果によって事物が神秘的に息吹くさまを表現している。直線の物語から解放され、場所や時を自由自在に選び出し、舞台を作り出し、夢を記録し、死まで飛び越えて浮遊する。「ぼくは目に見えるぼくの血と、目には見えぬ血、肉体の血と魂の血でこの映画を作りました」──ジャン・コクトー(アンナ・ド・ノアーユに宛てた手紙より)

『ブローニュの森の貴婦人たち デジタルリマスター版』
[1944年/フランス/1時間26分]
監督:ロベール・ブレッソン
出演:ポール・ベルナール/マリア・カザレス/エリナ・ラブルデット
誇り高い貴婦人エレーヌは恋人ジャンの愛を試そうと別れ話を持ちかけるが、ジャンはあっさりと同意し、エレーヌは自分に対する愛情はもう冷めていることを知る。復讐を企む彼女は残酷な計略をめぐらすが…。孤高の映像作家ロベール・ブレッソンがドゥニ・ディドロによる小説「運命論者ジャックとその主人」を原作に脚色、トリュフォーやゴダールたちに多大な影響を与えた。当時無名だったブレッソンの為にコクトーは台詞監修のクレジットを引き受けたという。ブレッソンはコクトーとの友情について「二人とも自分の魂の全てを作品にこめているという点で確かだった」と述べている。彼らの交流は長く続き、コクトーは自らの死の1週間前にもブレッソンに手紙を送っていた。

『美女と野獣 4Kデジタルリマスター版』
[1946年/フランス/1時間34分]
監督:ジャン・コクトー
出演:ジャン・マレー/ジョゼット・デイ/ミラ・パレリ
時代を超えて何度も映像化され、愛され続ける御伽噺<美女と野獣>を初めて実写映画化したのはコクトーだった。当時の恋人で長年の公私におけるパートナー、ジャン・マレーを野獣/王子に抜擢し、息をのむほど艶やかで仄かな官能が香りたつ幻想譚を生み出した。豪奢なコスチュームや耽美で独創的なインテリアといった、魅力的な美術デザインを担当したのはディオールやシャネルとも仕事を重ねたクリスチャン・ベラール。コクトーが表現しようとしていた、ギュスターヴ・ドレの挿絵の世界と映画を結びつけることに成功した。撮影は『ローマの休日』(1953)、『ベルリン・天使の詩』(1987)の名匠アンリ・アルカン。試写では、マレーネ・ディートリッヒがコクトーの手を握りながら鑑賞したという。

『オルフェ デジタルリマスター版』
[1950年/フランス/1時間35分]
監督:ジャン・コクトー
出演:ジャン・マレー/フランソワ・ペリエ/マリア・カザレス/マリー・ディア
死んだ妻に会うために冥界へ向かう男の悲恋を描いたギリシャ神話のオルフェウス神話もコクトーの手にかかれば、1950年代のパリにて、死の王女に思いを寄せる詩人の物語と変身する。『詩人の血』にも登場した鏡というアイテムが今度は冥界へと続く扉となり、恐ろしくも優雅な旅路へと誘う。また、カーラジオから流れる詩などミステリアスかつ耽美な要素が散りばめられつつも、死神の付き人を思わせる黒装束のバイカーや街中での追走劇などが当時のパリの風景の中で描かれ、通俗性を兼ね備えた活劇としての魅力も充分。主人公オルフェを演じるのはジャン・マレー。死の王女役には『ブローニュの森の貴婦人たち』、ジェラール・フィリップと共演した『パルムの僧院』(1948)で知られるマリア・カザレス。異界の美しい住人を圧倒的な存在感で演じ切り、説得力を与えている。

上映期間 2023年3月18日~3月24日
公式サイト http://jcff.jp