第8回【映像でめぐる 自然と人びと、暮らしの記録】「草・つる・木の恵み ー 飛騨国白川郷」

2023年12月17日

第8回【映像でめぐる 自然と人びと、暮らしの記録】

「草・つる・木の恵み ー 飛騨国白川郷」

ほとり座・富山民藝協会 共同企画

失われてしまった自然と深く共生するくらしには、美しい技術や儀礼がありました。
便利な時代に生きる私たちですら、羨ましく感じるほどです。
そんな日本と世界の人々の生活文化を記録した、貴重な映像作品の定期上映会を開催します。


民映研作品no.114
(岐阜県大野郡白川村 萩町・馬狩・小白川・戸ヶ野|1998年|57分)

このフィルムは、その多彩な草木を活用した白川の生活文化を記録したものである。

スゲやガマなどの水辺の草は節がなく、繊維が長い。その性質を利用し、ムシロやハバキ(脛あて)が作られる。

樹木の場合には、樹皮をとるもの、木質部を使うもの、木全体を使うものがある。樹皮を使うのはウリハダカエデやシナノキ。この内皮を使って雨具のバンドリなどがつくられた。木質部を剝いで使うのは、しなやかで粘り強い性質を持つハナノキ。この木質からは細い板状にしたヒデ(ヒゴ)をつくり、それを組んでヘンコ(腰カゴ)をつくる。薄いヒデからはヒノキ笠(網代笠)がつくられる。ハナノキのような材質は、雪に圧されては立ちあがるという雪国の環境が育てたものである。そして、木そのものを使うのはブナやナラである。

ツルは多様な使われ方をする。竹の育ちにくい白川では、サルナシ、マタタビなどの細いつるをヒゴにして、ショーケ(水切りザル)がつくられる。ヤマブドウなどの太いつるは、縄や綱となった。

深い渓谷を渡るための交通用具「カゴの渡し」は、ハナノキとブドウヅルを組んだ大きなカゴを、ブドウヅルを編んだ長大な綱に吊るし、自力で川を渡るというものである。急峻な山国で生きていくために、先人たちはこれらの交通用具を使って谷を越えた。

草やつるや木は、生活の資をもたらしたばかりでなく、白川の風土に育つ植物を熟知し、知恵と工夫をもって力強く生きてきた、この土地の先人の姿をも伝えてくれているのである。

上映期間 2023年12月17日
上映時間 57分
監督 姫田忠義
制作国 日本
制作年 1998年