現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜 Vol.2

2021年12月11日~12月17日

<Intoroduction>
アートハウスへようこそ

1970年代から今日まで続く日本の〈アートハウス〉は、“ミニシアター”という呼称で親しまれてきました。ここは世界中の映画と刺激をもとめる観客とが出会う場所。多様な映画体験によって、未来の映画作家だけでなく、さまざまなアーティストを育む文化的ビオトープとしての役割を担ってきました。上映されるのは、ただ楽しむための作品だけではありません。目を覆うほどグロテスクで、心をズタズタに引き裂く映画もあれば、ため息が出るほど美しい眼福の映画もあります。〈アートハウス〉の暗闇でスクリーンが反射する光を浴びることは、多かれ少なかれ——私たちの生き方を変えてしまう体験なのです。

連続講座「現代アートハウス入門」では、〈アートハウス〉の歴史を彩ってきた「ネオクラシック(新しい古典)」と呼びうる作品を7夜連続日替わりで上映。さらに、気鋭の映画作家たちが講師として登壇し、各作品の魅力を解説。みなさんとQ&Aを交えながら、これからの〈アートハウス〉についての知見を共有します。第2弾となる今回は、全国23の劇場をつないで開催。どうかふるってご参加ください。

<参加料金>
各プログラム
30歳以下 1,200円
31歳以上 1,800円


第1夜 12月11日(土)
19:00開映[本編 99分+レクチャー 60分]
講師 深田晃司(映画監督)
『クローズ・アップ』
1990年|イラン|99分|カラー
監督・脚本・編集:アッバス・キアロスタミ 
出演:ホセイン・サブジアン、ハッサン・ファラズマンド、モフセン・マフマルバフ

失業者のサブジアンはバスで隣り合わせた裕福そうな婦人から読んでいた本について聞かれ、なりゆきから自分が著者で映画監督のマフマルバフだとつい偽ってしまう。婦人の家に招かれた彼は、映画の話を情熱的に語るうちに、架空の映画製作の話にこの家族を巻き込み…。映画監督だと身分を偽り、詐欺で逮捕された青年の実話をもとに、再現映像とドキュメンタリーを交差させて描いた異色作。

第2夜  12月12日(日)
19:00開映[本編 69分+トーク 60分]
講師 岨手由貴子(映画監督)× 大江崇允(映画作家/脚本家)
『マッチ工場の少女』
1990年|フィンランド|69分|カラー
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ、ベサ・ビエリッコ、レイヨ・タイバレ

マッチ工場で働くイリスは、母と義父を養っている。ある日、給料でドレスを衝動買いしてしまった彼女は、義父に殴られ、母からドレスの返品を命じられる。ついに我慢できなくなった彼女は、家を飛び出しディスコで出会った男と一夜を共にするが、その男にも裏切られ…。何の変哲もない娘のどん底の人生を淡々と描き、絶望的な状況になぜか笑いが込み上げてくるアキ・カウリスマキ映画の真骨頂ともいえる一作。

第3夜 12月13日(月)
19:00開映[本編 102分+トーク 60分]
小田香(映画作家)× 太田昌国(シネマテーク・インディアス)
『鳥の歌』
1995年|ボリビア|102分|カラー
監督・脚本:ホルヘ・サンヒネス
出演:ジェラルディン・チャップリン、ホルヘ・オルティス

16世紀にアンデスを「征服」したスペイン遠征隊の行為を、批判的に描く映画を製作しようとした撮影隊が直面した現実とは? 撮影に訪れた先住民の村で「ここから出ていけ!」と詰め寄られた映画人たちは、やがて問題の本質に気づく。アンデス世界の価値観に基づく独自の映画言語でゴダールらにも衝撃を与えたボリビア・ウカマウ集団の代表作の一つ。ロカルノ国際映画祭「質と刷新」賞受賞。

第4夜 12月14日(火)
19:00開映[本編 91分+レクチャー 60分]
講師 想田和弘(映画作家)
『セールスマン』
1969年|アメリカ|91分|モノクロ
監督:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス、シャーロット・ズワーリン 

ボストンからフロリダへ。聖書の訪問販売員たちの旅にカメラは密着する。彼らが訪ねるのは教会の信者で、一人暮らしの未亡人や、難民、部屋代も払えない子持ち夫婦など。安いモーテル、煙るダイナー、郊外のリビング、月賦払い…。物質主義的社会の夢と幻滅、高揚と倦怠が奇妙に交差する、アメリカの肖像画。ダイレクトシネマのパイオニア、メイズルス兄弟のマスターピースを本邦初公開。

第5夜 12月15日(水)
19:00開映[本編 92分+トーク60分]
講師広瀬奈々子(映画監督)× 稲川方人(詩人/編集者)
『ビリディアナ』
1961年|メキシコ・スペイン|92分|モノクロ
監督:ルイス・ブニュエル 脚本:ルイス・ブニュエル、フリオ・アレハンドロ
出演:シルビア・ピナル、フェルナンド・レイ、フランシスコ・ラバル

修道女を目指すビリディアナは、叔父の屋敷に呼び出される。叔父は亡き妻に似た彼女を引き止めようと嘘をつくが、それに気づいた彼女は家を去る。絶望した叔父は自殺。責任を感じた彼女は貧しい人々を屋敷に住まわせ世話しようとするが…。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞の一方で、カトリック教会から大きな非難を浴び、本国スペインやイタリアで上映禁止に至った問題作。

第6夜 12月16日(木)
19:00開映[本編 90分+トーク60分]
小森はるか(映像作家)× 月永理絵(エディター/ライター)
『ある夏の記録』
1961年|フランス|90分|モノクロ
監督:ジャン・ルーシュ、エドガール・モラン
出演:マルスリーヌ・ロリダン、ジャン=ピエール・セルジョン、ナディーヌ・バロー

パリ、1960年、夏。街ゆく人々に軽量16ミリカメラと録音機が問いかける。あなたは幸せですか? あるいは、愛、仕事、余暇、人種問題について…。作り手と被写体とが制作プロセスを共有することで、映画が孕む作為性や政治性が明らかになり、リアルとフィクションの概念が問い直される。映画作家で人類学者のルーシュと、社会学者で哲学者のモランによるシネマ・ヴェリテの金字塔。

第7夜 12月17日(金)
19:00開映[本編 85分+トーク60分]
講師 三宅唱(映画監督)× 大川景子(映画編集)
『イタリア旅行』
1954年|イタリア・フランス|85分|モノクロ
監督・脚本:ロベルト・ロッセリーニ
出演:イングリッド・バーグマン、ジョージ・サンダース

結婚8年目、一見仲の良いカテリーナとアレックスは、実は破局寸前。ベズビオ火山、ポンペイの遺跡、カプリ島などをめぐりながら、二人は離婚へと突き進んでいくのだが…。ロッセリーニは、バーグマンとサンダースに即興的な演技を求め、生々しい感情のゆらぎをフィルムに焼き付けた。ゴダールに「男と女と一台の車とカメラがあれば映画は撮れる」と言わしめたネオ・レアリズモの大傑作。

上映期間 2021年12月11日~12月17日
公式サイト http://arthouse-guide.jp