誰のせいでもない
2017年1月21日(土)
真っ白な雪に包まれたカナダ、モントリオール郊外。田舎道を走る一台の車。突然、丘からソリが滑り落ちて来る。車はブレーキをきしませて止まる。悲劇は避けられたかに思えたが… … 。誰のせいでもない一つの事故が、一人の男と三人の女の人生を変えてしまう。車を運転していた作家のトマス、その恋人サラ、編集者のアン、そしてソリに乗っていた少年の母ケイト。誰のせいでもない。優しく聞こえるその言葉の奥で、彼らの感情は揺れ動く。誰も責められない。誰も憎めない。苦しくて、切ない感情を抱きながら。これは、彼らの12年にわたる物語である。
監督は、『パリ、テキサス』、『ベルリン・天使の詩』などの名作や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』などの大ヒットドキュメンタリーで知られる巨匠ヴィム・ヴェンダース。自らが発見したノルウェーの作家、ビョルン・オラフ・ヨハンセンのオリジナル脚本を得て、罪悪感と赦しというテーマを、時に繊細に、時に大胆に、心の奥をカメラで覗き込むようにして、人間の感情こそがいかにサスペンスフルかを描き出している。揺れ動く感情のランドスケープというべき映像は、まさにヴェンダースが挑戦した新しい映像世界だ。
出演は、映画監督・作家としても活動するジェームズ・フランコ、自然体な中にミステリアスな魅力をかもしだすシャルロット・ゲンズブール、今もっとも注目される女優でナチュラルな輝きを放つレイチェル・マクアダムス、落ち着いた知性の内に秘めた葛藤を表現するマリ=ジョゼ・クローズと豪華な実力派が揃った。また編集者ジョージにはシェークスピア劇からハリウッド大作まで幅広く活躍するピーター・ストーメア、トマスの父にヴェンダース監督の1981年作『ことの次第』に主演したパトリック・ボーショー、ドラマの鍵になる少年クリストファーを子役時代から活躍し、カナダ・アカデミー賞主演男優賞にもノミネート経験がある若手ロバート・ネイラーが演じている。